CXデザイン/UXデザインの違い|それぞれの役割も合わせて解説

UXデザインとは何か?そう聞かれれば、ビジネスマンやその分野に興味がある学生であれば「ユーザー体験である」と答えられる人も多いだろう。

では、CXデザインとは?そう聞かれると、少し面を食らうかもしれない。

CXデザインとは「顧客体験である」と答えられたとしても、一つ疑問が浮かぶ。

「UXデザインとCXデザインの違いとはなんだろうか?」と。

双方とも意味合いとしては「体験」させることであるし、「ユーザー」と「顧客」に違いがあるのか?と考えてみるが、どうやらユーザー=顧客であるのは明白だ。

UXデザインとCXデザインそれぞれの役割と違いを知ることは、優れたUXを生み出す一歩となる重要なテーマだ。本記事でしっかりと解説していこう。

ユーザー体験 (UX) デザインとは?

ユーザー体験(UX)とは言葉通り、製品・サービスを通じてユーザーが体験することをいう。

「使ってみて良かった」「便利で使いやすい」などユーザーを前向きなマインドになれる体験そのものを示す。

顧客体験 (CX) デザインとは?

顧客体験(CX)とはこちらも言葉通り、顧客が体験することを指す。

CXの領域はUXよりも具体的で、製品・サービスを購入する前、購入した後にフォーカスしている。

CXを向上させることで顧客を増やし、独自のブランドを確立させていくことが目的だ。

 

UXとCXを混同してしまう…その理由とは

改めて言わせてもらうが、UXとはユーザー体験を指し、CXは顧客体験を指す。この二つの根底にある意味合いは同じだ。しかしIT化が進み、世の中に普及したことによってwebやアプリケーションなどのデジタルコンテンツがユーザーとの接点になる、ということが増えた。

そのため、UXデザイナーはユーザー体験を中心に据えたデジタルプロダクトの設計を行うのがメインとなり、その他の部分をCXによる設計で補う、という流れになったのが正しい解釈である。

 

UXとCXそれぞれの領域

UXとCXの違いを言葉だけで説明するとなんのこっちゃとなるので、世界大手のECサイト「Amazon(アマゾン)」でわかりやすく例えてみよう。

Amazon(アマゾン)における「UXデザインの領域」

ユーザーがサイトに訪れて商品購入するまでの体験が「UX」。

  • 商品の画像が大きく表示されて見やすい・値段やサイズ・カラー選択も一目瞭然
  • 画面操作しやすい(決済もスムーズ)
  • 商品の届け日時指定が細やか、即日届けるサービス、置き配か手渡しか選択できる

Amazon(アマゾン)における「CXデザインの領域」

ユーザーが商品を購入する前後に体験する部分が「CX」。

  • ユーザーへのメール配信で効果的な購買訴求を図る
  • 「どういう商品が求められているのか?」をユーザーの購買・閲覧履歴を把握し、おすすめ表示する
  • 不良品だった場合すぐに返金手続きができる(アマゾンサイト内にもわかりやすく表示されている)

 

上記のように、UXデザインの領域はユーザビリティの向上などにより「スムーズに買い物ができて翌日には商品が自宅に届く」という体験をユーザーに提供。することだ。

一方、CXデザインの領域はMAツールなどを使ったメール配信や、Amazonのトップ画面に表示される「あなたへのおすすめ」や購入した後の返品などのフォローも簡潔で分かりやすくするなど、顧客視点で考えられたものが多い。

 

CXデザインを行う上での注意点

UXデザインであれば実際に体験するのは主にユーザーなので、「ユーザー視点」に立った設計を行うことが大事だ。

しかし、CXデザインを行う上で大事なのは「顧客視点」であると言うことだ。例えば、おもちゃ屋さんのターゲットユーザーは『子供』だが、実際に会計をするのはその子の親だということが多い。購買の可否を判断する親も含めた体験設計(例えば、おもちゃであれば子供にとって安全か?)をしなければ、どれだけ子供にとって魅力的なおもちゃでも怪我の恐れがあるなら購入されないだろう。

CXを向上させるためには、取り巻くユーザーの環境を知ることも大切なのだ。

 

企業がCXを最重要視する理由

CXを向上させるということは、顧客満足度を高めるということであり、それが売り上げに直結することを教えてくれる事例を紹介しよう。

みなさんご存知の「無印良品」は日本全国に200を超える直営店を展開し、シンプルなデザインや素朴さが魅力のブランドだ。

無印良品を展開する「株式会社良品計画」のIR情報によると、2017年2月の営業収益は3,332億円から右肩上がりに推移し、2020年2月までの営業収益が4,387億円とこの3年間だけでも1,000億円以上アップしているの見ると、好調ぶりがうかがえる。

※引用元:https://ryohin-keikaku.jp/ir/finance_info/

 

なぜこれほどまで事業実績をアップできたのか?

それはユーザーの行動を分析し、ユーザーの声に耳を傾けているからだ。

具体的には…

  • 「どのような商品があると嬉しいか?」ユーザーの要望を受け付けてくれる『ご意見パーク』の設置
  • ユーザーの「こうしたい、ああしたい」など悩みの大小に関わらずに相談にのってくれるMUJI SUPPORTの設置

ユーザーが購入する前の悩みを相談窓口で対応することで不安や購入後の失敗がないようにしている、ユーザーの購入後の使用感を踏まえて要望や意見をしっかりと受け入れ、改善につなげることでより良い商品を提供することができ、「使ってよかった」とユーザーの満足につながる。ユーザーの満足は顧客化(リピーター)に繋がり、企業の売り上げアップにもなる…と良い関係が構築できるのだ。これこそCXが重要視される理由だ。

 

CXとUXは連動することが重要

CXとUXそれぞれの役割について説明したが、どちらかが欠けてもうまく機能しない。

CXとUXの両デザイナーは、自身が行うべきミッションを明確にしておけば連動してプロジェクトを進めることができる。

役割の一例を記すので、CXデザイナーとUXデザイナーの違いをイメージしてみよう。

 

【UXデザイナーの役割】

ビジネス、ユーザーの具体的なゴール設定をし、それを達成すること

【ECサイトで例えると】

ビジネスのゴール:売り上げを◯◯パーセントアップさせる

ユーザーのゴール:売り上げ〇〇パーセントアップさせるために、サイト訪問者数を増やす

→ユーザーの行動を分析(ユーザーインタビューやアンケートなどのデータ分析)、ユーザビリティを向上させる(効果的な商品の見せ方)

 

【CXデザイナーの役割】

企業・ブランド全体のゴールを達成すること

【ECサイトで例えると】

企業・ブランド全体のゴール:ECサイトのリピーターを増やし、ブランドを確立する

→顧客満足度を上げるための内部体制の構築(カスタマーサポートの設置など)、ステークホルダーを対象とした企業のブランディングなど

 

CXを向上させるにはカスタマージャーニーマップが重要

企業やブランド力を高めていくためには、ユーザーの動向を知ることが何よりも大切だ。

ではどのように調べていくのか?ユーザーがどこで企業・ブランドを知り、どういった経緯でコンタクトするのか?それらを知るためにはカスタマージャーニーマップを活用するのがとても有効的だ。

では、なぜCXを向上させるために、カスタマージャーニーマップが必要なのか?

その理由は主に4点ある。

  1. ユーザーから見た企業(ブランド)の強み・弱みを知ることができる
  2. ユーザーの行動・心理を細かく知ることができる
  3. チーム内における共通認識になる
  4. MAツールを効果的に活用するためのソースになる

 

顧客体験 (CX)・ユーザー体験 (UX) とブランディングとの関係

UXもCXも最終的にはブランドの確立が目的である。そのためには、ユーザーの信頼を得続けることが大事となり、ブランディングにおいて最重要テーマだ。

UX、CXの交わりによってどうブランディングに影響し、関係していくのか?

ここで改めて言うが、UXとはユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験のことを指す。

UXデザイナーが求めるゴールをお菓子で例えると「見た目の形やデザインも良いし、食感も楽しくて、美味い!」である。

対して、CXとは顧客視点で得られる体験のことを指す。

UXと同じく、CXのゴールをお菓子で例えると、「あのブランドが発売したお菓子なら安心して子供に食べさせられる」「絶対美味しいから間違いないから買いたい」「有名人の〇〇さんも好きだから買いたい」などだ。

優れたUXによってユーザーからの信頼を得て、優れたCXによりユーザーへ約束することが「企業(ブランド)の確立」であり、ブランディング活動とも取れるのだ。

 

まとめ

「CXとUX」それぞれの領域は異なるものだが、連動させることで企業価値を高めることができる。大事なことは、チーム内でのコミュニケーションで齟齬が起きないよう目標に対しての共通認識を持つこと。そしてチーム一丸となってゴールに向かうことだ。