人生を送る上で、誰しも遭遇するのが「課題・問題」だ。プライベートでも、仕事でもいつも「課題・問題」に向き合い、解決しようとしていることだろう。筆者も当然その一人だ。
頭を悩ませることもある「課題・問題」を解決する上で非常に有効なのがブレインストーミングだ。UXデザインを行う上でもよく使われるし、会社内でもブレスト、と称して参加したことがある人もいるのではないだろうか?
しかしここ最近、ブレストについて懐疑的な見解を持つ人も出てきたように思う。
要するに、ブレストを行なっても効果が実感できないというらしいのだ。
本記事では、ブレストについての基本的な内容に加え、効果的な実践方法、最近のブレスト事情なども踏まえて解説していこうと思う。
結論から申し上げると、「ブレストを行う意義は大いにある」ということだ。是非、最後までお付き合いいただければと思う。
そもそもブレインストーミングとは?
ブレイン(脳)ストーミング(嵐)、合わせて脳嵐となるが、ブレインには脳、脳髄、知性・知力、頭のいい人。秀才など広義的な意味を含んでいるので、直訳すると「知の嵐」とするとクールだろうか。
言い回してしまったが、正式には集団発想法や集団思考とも呼ばれている。ブレストは複数人でアイデアを出し合い、革新的でユニークなアイデアを生み出すことを目的とした会議方式の一つだ。
ブレインストーミングの基本的な4つのルール
「複数人でアイデアを出せばいいのか。簡単そうだな」と思った方は少し立ち止まってほしい。ここで無闇にブレストを実践してしまうと、ほぼ成功しないと断言しよう。うまくいかない原因がここにある。
そもそもブレストには基本的なルールが4つあるのをご存知だろうか?とはいえ、何も難しいことはない。ルールを筆者なりに端的にまとめると「フラットな立ち位置で個々が持つアイデアをたくさん出そう!」だ。
…これだけでは心許ないので、以下に詳細をまとめたので見ていこう。
1.否定や答えはいらない
そのままだが、出たアイデアに対して否定をしたり、意見したり、アイデアに対しての質疑応答を求めてはいけない。ブレインストーミングはあくまでアイデア創造の場だ。この間はドラえもんの秘密道具である「どこでもドア」や「タケコプター」などが存在する世界にいると思って自由に創造・想像しよう。
仮に、意見するとしたらそれはまだ先のフェーズだ。
2.斬新で面白いアイデア大歓迎
前途したが、あなたたちがブレストしている”場”はドラえもんがいる世界だ。なので面白くてユニークで斬新なアイデアを出していこう。
面白いアイデアが出ない理由の一つに「非現実的なこと」だと自分で判断したり、周りの目を気にして言い出せないなどがあるが大丈夫。ここは”ドラえもんが存在する世界”だ。
3.とにかくアイデアを出そう!
うんうん悩んでひねり出すアイデアも良いが、ブレストで求められるのは質より量だ。直感的に口から出るアイデアを飲み込まず、吐き出すようにしよう。
ちなみに、いちど飲み込んだアイデアを次に発言しようとすると、「なんだったか忘れた…」なんてもったいないことになる。
アイデア発表のタイミングを逃してしまったのであれば、必ずメモをとり、必ず吐き出すようにしよう。
4.アイデアを組み合わせてみる
質より量を優先して集まったアイデアの中には端的な内容も多く含まれるだろう。そんな時は、アイデア同士を組み合わせてみて新たなアイデアになるかどうかを検証していこう。これによって最終的なアイデア候補を選定することができる。
ブレインストーミングを行う上での段取りとは?
基本的なルールが分かれば、次はブレインストーミングを行うにあたり段取り(セッティング)を組んでいこう。この部分を丁寧に行わないと、ブレストは徒労に終わる。
脅しているわけではなく、事実ブレストは使えないと言われてしまう原因がここにある。
読者の皆さんがそんな思いをしないよう、要点を説明していこう。
大事なポジション「ファシリテーター」を決める
まず、ブレインストーミングの進行・司会役である「ファシリテーター」を決めよう。
ブレストでのファシリテーターに求められるのは、中立性はもちろん、どのようにアイデア出ししてもらうのか?などブレストを効率よく円滑に進める為のスキルだ。
ホワイトボードなどに、参加者が出したアイデアをまとめて見やすくし可視化する”グラフィックレコーディング”などを使うのも良いだろう。
参加するメンバーを選定
参加するメンバーは10人以下にし、性格や立場が違うなど属性が違うメンバーを選定しよう。
そうすることで様々なアイデアを集約することができ、精度の高いブレストを行うことができる。
ブレストの目的を決める
次に決めるのが、何についてアイデア出しをするかを明確にすることが大事だ。目的と書いたが、解釈の余地を与える広いテーマは絶対にやめたほうがいい。
例えば、「会社の売り上げをアップさせるためには?」は典型的にNGだ。
なぜなら、売り上げをアップさせるために「店舗の売り上げを上げること」「人件費を抑えること」「店舗を出すこと」など参加者によって解釈が異なるからだ。
そうなるとアイデアのカテゴライズは収拾がつかなくなり、時間を無駄にしてしまうだろう。
解釈の余地を与えないテーマの例をだすとしたら「〇〇事業部〇〇部門の売り上げを〇〇パーセント上げたい」(もっと解釈の余地をなくしてもいい。むしろそのほうが良い。)くらいまでしっかり決めよう。
また、ブレストの目的は事前にファシリテーターから参加者にしっかりと伝えておくようにしよう。
ブレストを行う時間を設定する
ブレストを行う際は、必ず時間設定を設けよう。アイデア創造において一番の大敵は「だらだらと続けること」だ。当日の流れをしっかりと決め、時間配分すると良いだろう。
【ブレスト時間配分の一例】
- 個人でのアイデア出し(〜10min)
- グループ内でのアイデア出し(10min〜15min)
- アイデアのグルーピング(10min〜15min)
- アイデアの発展(アイデアを組み合わせてみたりするなど)(15min〜20min)
- まとめ(アイデアとして決定するのか?さらに選定するのか?その後の進捗確認など)(〜10min)
ブレインストーミングがうまくいく方法をご紹介!
ブレストに必要なルールやロジ(段取り)を紹介してきたが、どう感じただろうか?実はそんなに難しいことではないのだ。
特に段取りの部分に関しては、むしろ日常的に行なっている会議にも使えるもの(というか基本的なこと)とは感じなかっただろうか?
それでも、「ブレストが苦手」「ブレストがうまくいかない」と嘆くファシリテーター、参加者の皆さんは以下を参考にしてみてはいかがだろうか?
アイデアが出ない!そんな時に
アイデアをひねり出そうとしても出てこない時は多々ある。しかし、それはどの部分に対してアイデアを出しているだろうか?
例えば、「このトマトを3分以内に10個カットする方法を考えてください」と言われた時、どんなアイデアが出るだろうか?
- 包丁を長くして、一度にカットできるトマトの数を増やす
- まな板に包丁を取り付けて、トマトを置けばカットできるようにする
- 手袋にナイフをつけて、トマトを握ればカットできるようにする
など、筆者のアイデアが奇抜ではあるものの、このようなアイデアが出たとしよう。
これらには共通点があるのがお分かりだろうか?
「トマトを3分以内に10個カットする方法」についてアイデア出しをしているのだ。これは別に間違いではない。しかし、アイデアは直ぐに底打ちになってしまうだろう。
同じ側面から物事を考えるだけではなく、多方面から物事を考えてみるとアイデアの幅はさらに広がるだろう、という内容だ。
1.「なぜなぜ分析」を使ってみよう
まずは有名な「なぜなぜ分析」を使ってみるのがおすすめだ。
その名の通り、課題を解決をしたいテーマについて「なぜ?」を繰り返し、課題のその奥にある、本質を知り、改善することで合理的に解決が図れるというものだ。
試しに「トマトを3分以内に10個カットする方法」について「なぜなぜ分析」してみよう。
【なぜなぜ分析の例】
(1).なぜ3分以内に10個カットしなければならないのか?
↓ ※早くトマトをカットしたいから
(2).なぜ早くトマトをカットしたいのか?
↓ ※トマトのサラダを早く作らなければならないから
(3).なぜトマトのサラダを早く作らなければならないのか?
↓ ※提供時間を短くしたいから
(4).なぜ提供時間を短くしたいのか?
↓ ※客席の回転率を上げたいから
5.なぜ回転率を上げたいのか?
↓ ※売り上げを上げたいから
6.なぜ売り上げを上げたいのか?…
皆さんもお気づきだと思う。
ここで重要なのは「なぜ?」を繰り返していくと、徐々に問題の本質に近づいていっているのがお分かりだろう。
ちなみに、「なぜ売り上げを上げたいのか?」の次はあまり考えられないと思うので(被雇用者の場合、それ以上は答えられないと思う。むしろ経営者向けの問いかけになるだろう。)ここまでにしておく。
ここで大事なポイントは「なぜトマトを早くカットしなければならないのか」の本質が「提供時間を短くしたい」「客席の回転率を上げたい」となっていることに注目できるかどうかだ。
どうだろう?筆者が出した奇抜なアイデアは「トマトを早くカットできるアイデア」で詰まってしまったが、なぜなぜ分析で浮かび上がった「提供時間の短縮や客席の回転率アップ」についてアイデアを新たに出すことはできないだろうか?
2.希望点列挙法と欠点列挙法を使ってみる
「もっとこうだと良いのに」という”希望点”を”列挙”するのが希望点列挙法だ。
発想対象をあらゆる角度から見て希望点を出すことが重要となる。
対して欠点列挙法は「ここが不満」「もっとこうできないのか」などの”欠点”を“列挙”することを言う。こちらもあらゆる角度から欠点を挙げるのだが、批判的思考と現実的で常識的な思考が必要となる。
この2つの想像技法は単体でも効果を発揮するが、ブレストの場合は希望点列挙法と欠点列挙法を合わせるとより良いアイデアが生まれやすくなるだろう。
アイデアを集めたけど、うまくまとまらない!そんな時に
ブレストでアイデアは集まったものの、うまくまとまらずにタイムオーバー。なんてことよくあることだ。
ブレストはアイデアをたくさん出すことにフォーカスされがちだが、アイデアを組み合わせたり、グルーピングするのも非常に大事だ。
ここでは代表的なグルーピングと検証の方法を紹介していこう。
【マインドマップ】
メインテーマを中央に配置し、そこから連想されるアイデアを線でつなげていきつつ、さらに関連キーワードを分岐としながら放射状に展開していく思考方法のことをいう。
個人で使用する場合は記憶力や発想力、理解力を高めることができ、ブレストのようなチームで活用する場合では各々が持ち寄ったアイデアを一枚の絵のように全体を俯瞰できる図として可視化できるだろう。
こうすることでチーム間での理解が深まり、より良いアイデアを産むことができる。
【KJ法】
マインドマップよりもより論理的で的確に問題解決への道筋を明らかにしていくために使われる方法だ。
付箋や小さめの紙にブレインストーミングでかきだした1アイデアにつき1枚の紙へ記入していく。(ラベル化)
その後、関連するラベル同士をグループにしてまとめ、図解化する。前途したが、KJ法はマインドマップと違い、論理的に進めるため、相関性とその関係性を矢印や記号などを使って明確にしていく。
具体的には、
- 関係
- 原因・結果
- 因果的
- 反対・対立
などの内容をグループ間で示すことが多い。
そうしてまとめたものを付箋に書かれている言葉をできるだけ使いながらグループごとに一つの文章につなげていくことで、問題解決への道筋を立てていくことができる。
KJ法ができて50年以上経った今、原始的だが確実にアイデアをまとめることができる手法の一つに変わりないだろう。
ブレインストーミングは一人でもできる!?
ブレストと聞くと、10人以下でやるものだと思っている方もおられるだろう。
もちろん複数人で行うブレストでも一人でアイデア出しをする時間をとる場合もあるが、完全に一人だけで完結するブレストもある。
しかも、一人でアイデアを出すので周りの目を気にすることもないので、突飛もなくユニークなアイデアを出すことが多い。
1人で6役をこなし、様々な視点からアイデアを量産するシックスハット法などを使ってみたり、全くテーマとは関係ない単語を使って発想していくのも妄想的でクリエイティブなアイデア創造ができるだろう。
ブレインストーミングを行う上での注意点
ブレストを行うにあたり、気をつけるべきルールや段取りの他に注意すべきことが実はまだある。
ここまで話をしていて誠に申し訳ないのだが、「ブレストでアイデア出しをするのは効率が悪い」という結果が出ているのだ。
なぜ効率が悪いとされているのか?それは以下の2点だ。
参加者への気兼ね
ブレストは集団で参加し、アイデアを出し合う会議方式というのはもうご存知だろう。
「斬新でユニークなアイデアを出す」とルールにもあるのだが、周りの目を気にして発言ができないことが多々ある。そのため、普遍的で面白みのないアイデアしか量産されず、イノベーションが生まれることなく静かに終わる。
この流れこそが「ブレストは無意味」だと言われる所以なのだと思う。
集団で話し合うと思考が止まる時間が多い
集団でブレストを行なっていると、ファシリテーターが聖徳太子でない限り、発表する人は一人ずつになる。
そうなると、アイデアを出すことより聞くことの方が多くなるため、思考は自ずと止まってしまい、全体のロスを生んでしまう結果に。
この双方の問題を解決する方法がある。それはとてもシンプルですぐに実践できることだ。
【解決方法:発言せずに付箋に記入。】
これだけで、上記2点の問題を解決できてしまう。
まず、制限時間を設けてテーマごとに沿ったアイデアを参加者各々が付箋に記入し、時間になったらファシリテーターが回収、シャッフルして発表するようにすれば良いのではないだろうか。
付箋に記入するようにすれば常に個々の思考は働くし、グルーピングもスムーズに行えるし匿名性も守られ、効率よくブレストが進められるだろう。
アイデアの量が桁違い!?エレクトリックブレインストーミング
最近のブレスト事情で話題となっているのがエレクトリックブレインストーミングというものだ。
簡単に説明すると、
一人でパソコンに向かって思いついたアイデアをどんどん記入していく。
↓
他の参加者に匿名でアイデアが共有される
↓
そのアイデアを基に新たな発想へつなげる
の繰り返しとなる。
アイデアを効率よく出すことができる最強の手法ではないだろうか?匿名性を守るために専用のツールを入れた方が良いが、まずはSlackなどで試してみるのも良いのではないだろうか?
まとめ
今回はブレインストーミングについてお話ししたが、いかがだっただろうか?
いろんなネット記事などや書籍を見ていると「ブレストは意味ない」という言葉をよく目にする。しかし、真にブレストの意義を知ればこんなに素晴らしい手法はないと筆者は思う。
今回お話したブレストの基本的なルール、段取りを踏まえて「ブレストの目的」や「より良いアイデアを出すための方法」を意識して実践してもらえればきっと良い結果が見えてくるだろう。
また、日頃からブレストの練習を行い、発想力を鍛えおけば、ビジネスやプライベートだけではなく今後の人生でも大いに役立つと思うので、意識して取り組んでみてはいかがだろうか?