“氷”を“砕く”と書いて「アイスブレイク」。ブレインストーミングやワークショップ・セミナーなどに参加したことある方なら聞き馴染みのある言葉ではないだろうか?
ビジネスだけでなく、人生においてアイスブレイクは非常に重要な手法だ。なぜならば、人は人と関わらずには生きていけないから。人と関わるということは、コミュニケーションを取ることが必要不可欠となる。
しかし、「何を話せば良いのか?」「初対面の人は緊張する」などがネックとなり、商談では緊張して力が発揮できなかったり、プライベートでは初デートがうまくいかなかったりすることもあるだろう。
本記事で解説するアイスブレイクを理解すれば、ビジネスでもプライベートでも活用できるので是非読んでいただければ有難い。
アイスブレイクとは?
初対面の人同士の緊張を緩和させる目的として使われる手法のことだ。
集まった人たちの雰囲気を和ませ、コミュニケーションをとりやすい環境を整えることで、議論やワークショップの質を上げることができる。
アイスブレイクのメリット
アイスブレイクを行うにあたって、具体的にどんなメリットがあるのか?簡単に説明しよう。
緊張がほぐれる
会議や打ち合わせ、商談など初対面でもそうでなくても、顔合わせは緊張するのではないだろうか?
挨拶の時に緊張をほぐすようなトークが展開できれば、ピンと張り詰めた空気感を適度に緩めることができる。
仕切り直しができる
企画会議やブレインストーミングなどを行なっていると、どんどんアイデアが出づらくなり煮詰まってくることがある。そういった時にアイスブレイクを実践できれば、参加者の疲れた脳を癒し、リフレッシュできるので仕切り直しするのにもってこいだ。
参加者の考え方がわかる
例えば、アイスブレイクでお互いに自己紹介を行えば出身地や好きなものなどのヒアリングを通して、相手のバックグラウンドを知ることができる。
「何を信条にしているのか?「どういう価値観・考え方で人生を送っているのか?」などを少しでも知ることができれば互いの理解を深めることができるだろう。
そうすれば、心理的安全性が確保され積極的に発言できるようになるだろう。
心理的安全性については、本記事の後半に少しお話しする。
チームワーク力の向上
グループ単位での会議やブレストを行うのであれば、アイスブレイクで協力系のゲームを実践してみよう。グループ全員で力を合わせて盛り上がればチームワークの向上を見込むことができ、さらに力を発揮できるようになるだろう。
新たなアイデアの創造のきっかけになる
画期的なアイデア出しを目的としている場でも、アイスブレイクは一役買ってくれる。違った視点で考えなければいけないゲームなどを行えば脳が活性化され、枠にとらわれない発想ができるようになるので効果的だ。
アイスブレイク を行う上での注意点
ビジネスだけでなく、人生においても非常に役に立つアイスブレイクにデメリットはないだろう。
しかし、行う上での注意点はあるのでしっかりと心に留めてほしい。
アイスブレイクの時間は明確に区切る
参加者に集まってもらっているということは、「参加者の時間を使わせてもらっている」という感覚をファシリテーターは特に意識しよう。
それを前提にした上で、アイスブレイクは設けられた時間内で目的の結果を達成するための手法として捉えておいてほしい。
よって、アイスブレイクを行う時間は明確に区切ることが大事。
アイスブレイクの時間を長引かせてしまうとただの雑談になってしまい、逆効果となるので注意しよう。
趣旨から逸れないように注意する
「TPOに合わせる」「適材適所」という言葉もあるように、アイスブレイク行うために展開するトーク、ゲームなどはシーンに合わせて使い分けるようにしよう。
例えば、商談などのビジネスシーンで緊張を和らげようとして、自己紹介系のゲームをすると、それは逆効果になるだろう。(そもそもそんな空気感ではないだろうが)
また、参加人数の多い会議やセミナーにおいて、ビジネスで行うような「相手と共有できる話題」を話すようなアイスブレイクを実践してしまうと、ただの「おしゃべりする場」となってしまい、だらけた空気になってしまうだろう。
上記の例は極端だが、ファシリテーターは趣旨に合わせたアイスブレイクを行うように心がけなければならない。
アイスブレイクを通して見えてくるものとは?
「アイスブレイクは分かったけど、なんでそんなに重要なの?」と思う方もいるだろう。
アイスブレイクは手法であり、心理的安全性を確保するために不可欠なのだ。
アイスブレイクのメリットを説明した際に出てきた”心理的安全性”とは「他者の目を気にせず、自分らしさをさらけ出すことができる状態」のことを言う。
自分をさらけ出すことで、何が良くなるのか?グーグルが2012年に面白い検証・考察をしている。
社員の生産性を高めるため、生産性向上計画(プジェクト・アリストテレス Project Aristotle)に着手したグーグルの人員分析部は様々な業務に携わる数百のチームを対象に「生産性」の調査・分析を始めた。生産性の高いチームには共通点があると考えたのだ。
しかし、データ抽出が得意なプロ集団が揃っているにも関わらず共通点を見つけるのは容易ではなかった。
行き詰まってしまった人員分析部は調査データから再度検証を開始したところ、結論に至る共通点をついに発見したのだ。それこそが「心理的安全性」なのだ。
アイスブレイクには参加者同士の相互理解を深め、他者を否定しない関係性づくりの一端を担えるのだということも認識しておいてほしい。
シーンで使い分けたいアイスブレイクをご紹介
さて、アイスブレイクについて深掘りができてきたところで、どんなゲームがあるのかをシーン毎に選別・紹介していこう。
参加者同士が初対面の場合は…
実は自己紹介
「実は自己紹介」とは、自己紹介と合わせて「実は〜です」と言いながら自己PRを行う方法のこと。
渋い顔の人が「実は甘党です。」なんて言うと、少し微笑んでしまわないだろうか?それこそが狙いだ。意外な一面を知り、相手に親近感を覚えるのと同時に緊張を緩和することができる。発表する方は意外性を持たせた自己紹介にすると良いだろう。
グッドニュース
グッドニュースとは、参加者にとって「良かったこと」や「ためになった新たな気づき」などを発表・他の参加者と共有する手法だ。
簡単な自己紹介と併せて「良かったこと」や「新たな気づき」を1分ほどで端的に分かりやすく発表してみよう。簡単で短時間にできるアイスブレイク として活用できるのでオススメだ。
議論等で疲れた頭をスッキリさせたい場合
後出しじゃんけん
シンプルでいて、脳をリフレッシュさせるのに最適な方法といえば後出しジャンケンだ。
リーダー(ファシリテーター)が「後出しじゃんけん」「ジャンケンポンポン」の掛け声でグー、チョキ、パーのいずれかを出し、参加者は後出しでリーダーに勝つようにする。徐々にスピードアップしていくと盛り上がるのと同時に脳の体操もぴったりだ。
逆さしりとり
こちらもシンプルでいて、すぐに行うことができるアイスブレイクだ。
お題を決めて、最初にくる言葉を最後に言っていく(例:「デザイン思考」のデ→「ハンデ」)のだが、これが意外と難しい。少人数でも楽しめる手法なので、気軽に初めてみるのも良いだろう。
オンライン会議の場合
オンラインを使った会議だと「アイスブレイクは難しそう」と言われてしまいそうだが、そんなことはない。
“オンライン”だからこそ、できるアイスブレイク があるのをご存知だろうか?筆者が個人的にとても面白いと思った手法を厳選してご紹介する。
ストリートビュー共有を利用したアイスブレイク
オンラインだからできる画面共有を駆使したアイスブレイクを提案しよう。先にいっておくが、時間配分には要注意だ。というのもこちらの手法はかなり盛り上がってしまうから。
前置きが長くなってしまったが、オンラインのストリートビューを利用して、ファシリテーターはお題を決める。例えば、「自分が住んでいる最寄り駅のおすすめのお店はどこですか?」などにしてみよう。
お題が決まったら、参加者は一人ずつ自分の住む駅前に降り立ち(もちろんストリートビュー上で)、スクロールしながら「この商店街によく行く」などと会話をしながらおすすめのお店へと向かって行くのだ。
このアイスブレイクの何が良いかというと、今まで”仕事”の顔しか知らなかったのに”プライベート”の顔を少し知れることができることだ。「話しかけづらかったあの人がドーナツ屋さんに通ってるなんて…」なんて知れたとしたら、親近感がわかないだろうか?心理的安全性を確保できるアイスブレイク としておすすめする!
しかし、前途したが、このアイスブレイク は時間がかかる可能性が高い。あくまで趣旨を忘れずに効果的に取り入れてもらいたい。
ものしりとり
こちらはオンタイムで進行しやすく、即活用できる優秀なアイスブレイクだ。その名の通り、デスク周り、在宅ワークなら家にある”もの”を使ってしりとりするというものだ。
挙手制で回答できたら抜けて行くシステムでもいいし、誰が一番”もの”を出せるかにしてもいい。例えば、ギターをカメラの前に持ってきた人がいたら、次は「あ」で始める”もの”を持ってくる、といった形だ。
このアイスブレイク の良いところは、「ストリートビュー共有を利用した手法」と似ていて心理的安全性が確保されるのと同時に、頭の体操、体も動かすので良い運動になる。
たけのこニョッキ(特にオススメ)
ネーミングはとても可愛らしいのだが、チームワーク力を向上させるアイスブレイクとして最適なゲームだ。基本的なゲームルールは以下の通りとなるが、やりやすいように変更しても良いだろう。
- 親の掛け声でスタート。親の決め方はジャンケンに勝った人。
- 親が「たけのこ、たけのこ、にょっきっき」と掛け声をすると、参加者は手を合わせた状態で天に向かって突き上げて「1ニョッキ!」、「2ニョッキ!」と言う。この時、他の人とカブらないようにする。
- カブらなければ成功とし、早抜けしていく。
- 途中で「ニョッキ!」がカブってしまった、間違った数字を言ってしまった、ニョッキポーズをしなかった等も負けとなる。
- 負けた人が次のゲームで親となる。
- 合計で3回負けた参加者が出たところでゲーム終了とする。
「たけのこニョッキ」を行うメリットとしては勝ち負けというより、なんとか最後までカブらずにゲームをクリアしようとする団結力が生まれることが大きいだろう。
対面であれば目を合わせながら阿吽の呼吸を合わせることもできるだろうが、オンラインではネット回線によるタイムラグもあるため難しい。
だからこそ参加者はゲームクリアに燃えるのだ。
「たけのこニョッキ」が終わる頃には参加者同士の関係深まることだろう。
こんなアイスブレイクはいやだ!
今まで話してきたアイスブレイク に対して、「こんなアイスブレイク はいやだ!」をまとめてみた。ファシリテーターの皆さんは、ぜひ参考にして欲しい。
限定性のあるテーマでゲームをしてしまう
これは正直あるあるだと思う。
例えば、アイスブレイクの一環でグループ単位のゲームを行う場合、ファシリテーターから出すお題が一部の人しか知らないテーマだったとしたら、知らない人は残念な気持ちになるだろう。
例えば、アニメを主体にしたテーマだとすると、そのアニメを知らない人は詳しい人を頼らざるを得ないだろう。そうなるとチームワーク力の向上にはならないし、アイスをブレイクできない。
テーマを出すファシリテーターは「極力参加者全員が楽しめる」ということを念頭に考えることを忘れずに。
まとめ
アイスブレイクと聞けば、「緊張をほぐすもの」と覚えてもらえればそれまでなのだが、アイスブレイクを行うことで議論を活性化できたり、今まで以上のパフォーマンスやアイデアを生み出す起爆剤のような効果があるということも心に留めておいて欲しい。
ファシリテーターを目指している方はもちろん、ビジネスでの商談、そしてプライベートまで活用できるシーンはとても幅広いので、本記事をきっかけにアイスブレイクについての知識を深めてみてはいかがだろうか?