ユーザビリティとは?UI/UXとの関係性も併せて徹底解説

普段何気なく使っている製品やサービスに興味を持ったことはないだろうか?というのも、本記事をご覧になっている皆さんは「ユーザビリティ」ついて知りたいのだと思うが、実は身近にユーザビリティの”結晶”があちらこちらにあるのだ。

ユーザビリティって何?と質問されれば「使いやすさ?」という回答が一般的な感覚だと思うし、筆者もそう思う。

しかし、実はこの「使いやすさ」をより具体的に示してくれているのがユーザビリティなのだ。

本記事では曖昧性を含んだ「ユーザビリティ」をわかりやすく解説していくので、UI/UXデザインに関わる人々、あるいは勉強している学生にも是非見ていただきたい。

ユーザビリティとは?

ユーザビリティとは何か?を明確にする代表的な定義が国際標準化機構(ISO)から示されている。
その内容によると”特定の目的を達成するために、特定の利用者が、特定の利用状況で、有効性、効率性、そして満足とともにある製品を利用することができる度合い。”となっている。

「うーん…わかるような、わからないような。」とならなかっただろうか?

正直、なぜこんなにもシンプルな文章なのに、意味を咀嚼しようとすると頭がこんがらがってしまうのか…。

そんな方のために分かりやすく伝えようとすると、ネットショッピングで商品を購入する流れが分かりやすいかと思う。

“できるだけ安い値段で買える2リットルのミネラルウォーターを1ケース買おうと思った私は、ネットショップサイトの検索欄に「水」と入力し、検索した。検索結果で表示されたミネラルウォーターを安い順に表示し、最安値のミネラルウォーターをクリック。そうすると、1本販売のものからケース販売のロットが選択できたので、ケース販売をクリック。表示された商品ページにある「買う」ボタンを押すと、予め登録しておいたキャッシュカード情報で購入することができた。購入までにかかった時間はあっという間で、ミネラルウォーターは明日届くようだ。”

 

少し長いのだが、この文章の中にユーザビリティの大事な要素がたくさん隠れている。

国際標準化機構(ISO)が示したユーザビリティの定義とネットショッピングの例えを照らし合わせながら結びつけてみよう。

・特定の目的を達成するために
→できるだけ安い値段で買える2リットルのミネラルウォーターを1ケース買おうと思った

・特定の利用者
→私

・特定の利用状況
→ネットショッピング

・有効性
→ネットショップサイトの検索欄に「水」と入力し、検索した。検索結果で表示されたミネラルウォーターを安い順に表示し、最安値のミネラルウォーターをクリック。そうすると、1本販売のものからケース販売のロットが選択できたので、ケース販売をクリック

・効率性
→表示された商品ページにある「買う」ボタンを押すと、予め登録しておいたキャッシュカード情報で購入することができた。購入までにかかった時間はあっという間

・満足度
→ミネラルウォーターは明日届くようだ

以上。どうだろう?なんとなく見えてきただろうか?有効性、効率、満足度はユーザビリティにおいて重要な要素となるので、改めて詳しく見ていこう。

 

ユーザビリティで重要な3つの要素

ユーザビリティにおける重要な要素は以下の3つだ。

ネットショッピングの例えで多少なりともどういう意味かは理解できたと思うので、具体的にわかりやすく説明していこう。

・有効さ(effectiveness)

「ユーザが指定された目標を達成する上での正確さ及び完全性。」となっている。ここでは、正確さや完全性がとても重要で、ネットショッピングの例えで言うところの検索精度のことをいう。

ミネラルウォーターが欲しいユーザーがネットショップサイトで「水」と検索した時、オレンジジュースが出てくるとするならば”有効さ”は低いだろう。

・効率(efficiency)

ユーザが目標を達成する際に、正確さと完全性に費やした資源。

「資源とはなんぞや?」となるのだが、ネットショッピングの例えでいうと「購入できるまでの時間」を指すだろう。この時間が短ければ短いほど”効率”は高い。

・満足度(satisfaction)

製品を使用する際の、不快感のなさ、および肯定的な態度。こちらは、ネットショッピングの例えでいうところの「商品が届くスピード」だろう。できるだけ早く使いたいのに、届くのが1週間後となれば満足度は低い。

このように、ユーザビリティで重要なことはユーザーがストレスなく簡単に最短で目標を達成することができるか?ということだ。

この意味合いはUI/UXデザインのみならず、様々なビジネスにも言えることだと思う。また、この大事な3つの要素のうち、一つでも欠けてしまうとユーザビリティの向上には繋がらないので、しっかりと覚えておこう。

 

ヤコブニールセンの提唱する「ユーザビリティ10の原則」

ユーザビリティについて調べたり、勉強している人なら「ヤコブ・ニールセン」という名前を目にしたことや聞いたことはあるのではないだろうか?

ヤコブ・ニールセン」はデンマーク出身のアメリカの工学博士で、主にウェブサイトのユーザビリティ(使いやすさ)研究の第一人者だ。

webデザインやUIデザインをする上でユーザビリティを無視することはできず、その重要性を訴え続けてきた彼が提示した”ユーザビリティ10の原則”はとても有名である。

webデザイン、UIデザインを生業とする人もおられるかと思うので、詳細を説明しておこう。もちろん分かりやすく、だ。

1.システム状態の視認性を高める

簡単に言ってしまえば、サイトやアプリ上で何が行われているのかを目で見て分かりやすくしよう。という意味だ。

データを読み込んでいるのであれば、「データを読み込み中」と表記すればユーザーは納得するだろう。

仮に何の表記もされずに真っ白な画面のままだとすると、ユーザーは「フリーズしたのかな?」とそのサイトやアプリから離脱する可能性がある。

2.実環境に合ったシステムを構築する

実環境というのは、ユーザーのいる環境を指す。

ユーザーの使用する言語、時間、位置情報、などに合わせたシステムにしようということだ。グーグルマップなどを使用する際に、ユーザーの位置情報を求められたり、スマートフォンの初期設定で使用する言語や時間設定を行うよう促すなどが良い例だ。

3.ユーザーにコントロールの主導権と自由度を与える

サイトやアプリにどんな機能があるのか?ユーザーが興味本位でクリックして試してみることもあるだろうし、ネットショップにおいては商品の数量変更、配送日時の指定を自由にできた方が満足度が上がるだろう。

ユーザーにコントロールの主導権や自由度を与える代わりに、キャンセルできる機能も準備しなければならない。

4.一貫性と標準化を保持する

文章に出てくる主語がコロコロ変わると、読み手は混乱するのではないだろうか?

それと似ていて、サイトやアプリ内で使用しているアイコンやデザインがページが変わるごとに違うデザインになっているとユーザーは困惑してしまう。

統一したデザイン、ロゴ、言葉を使用するようにしよう。

5.エラーの発生を事前に防止する

「エラーが発生しました!」と表示されてもユーザーは困惑し、混乱するだけだ。

そうなる前に、「この場合だとエラーになってしまいます」と事前にユーザーへ分かりやすく注意喚起を促してくれる方がエラーは起きないし、混乱せずに済むだろう。

6.記憶しなくても、見ればわかるようなデザインを行う

覚えていないと使えないデザインや操作法は好ましくないだろう。

直感的に使えて、なおかつ時間を置いても”そのデザイン”を見ればまた直ぐに使えるデザインが理想的である。

何か検索したい時にグーグルを開くと、「Google」のロゴと検索窓のみのシンプル画面に切り替わる。グーグルの検索を直感的に使えなかった、使い方を忘れた、なんてことがあるだろうか?

7.柔軟性と効率性を持たせる

初心者ユーザーが使いやすいだけではなく、上級者ユーザーが求める要求にも応えられるようなデザインやシステム作りが必要だ。

例えば、カスタマイズすることで機能を拡張することができるGoogle Chromeなどが良い参考だろう。

8.最小限で美しいデザインを施す

ミニマムなデザインはUIにおいては正義である。

Googleの検索窓を思い出して欲しい。あれほど潔ければ、ユーザーが迷うことはないだろう。

9.ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする

予期せぬエラーが発生しても、何が原因でエラーが起きたのか?システム側から改善策の提示があれば、ユーザーは適切な対応が取れることだろう。

10.ヘルプとマニュアルを用意する

直感的に操作できるものでも、取り扱い説明書があるとユーザーは安心だ。

困った時のトラブルシューティングを検索できるようにしておこう。

ディスカウント・ユーザビリティについて

ディスカウント・ユーザビリティもヤコブ・ニールセンが提唱した一つ。

低予算で、短時間で、簡単に、誰でもできるというのが大きな特徴だ。

ひと昔前までは(というより今も行われているが)、ユーザビリティテストを行う人数は多ければ多いほど良いとされてきた。しかし、実際は5人にユーザビリティテストを行えば、十分な効果があると実証されており、これ以上テスト対象者を増やしても費用対効果は下がる、予算があるのであれば人数よりもテストの回数を増やした方が効果的なのだ。

ユーザビリティとUI/UXの違い

ユーザビリティについて、つらつらと分かりやすくお伝えしてきたが、UI/UXとはどう違うのか?説明しておこう。

というのも、ユーザビリティとは「使いやすさ」みたいな意味合いがあるとお伝えしたものの、UI/UXとの違いは明白であり、混同するとややこしいので簡単にその違いを説明しておこう。

UI(ユーザーインターフェイス)とは?

ユーザーと製品やサービスの接点全てを指す。

webでいうところのサイトの見た目や使いやすさのことで、サイトのレイアウトや使用される画像やフォントなどユーザーが目にする、操作するもの全てをUIと呼ぶ。

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?

サービスや製品を通して得られる「嬉しかった!」「使って良かった!」「めちゃ便利!」などの体験や感情のことを指す。

UIとUXの違いについては、下記の記事で分かりやすく解説しているので是非読んで欲しい。

 

ユーザビリティは最高のUI/UXを実現させるためのプロセス

UI/UXについておさらい的な感じも含めて簡単に解説した上で結論を言おう。

ユーザビリティとUI/UXに違いがあるというよりかは、「ユーザビリティというのは最高のUI/UXを実現させるためのプロセス」というのが正解である。

「ユーザビリティって使いやすさのことでしょ?だったらUIに必要なのは分かるけど、UXも関係あるの?」と言われそうだが、大いに関係はある。

ユーザビリティによりUIのデザイン性が向上することで、最高のUXデザインが作られるのだ。どれが欠けても良いモノ・コトは作れないのを忘れないで欲しい。

 

ユーザビリティとアクセシビリティの違い

ここでもう一つ、よく勘違いされる例を一つ紹介しておこう。

それは、ユーザビリティとアクセシビリティの違いについてだ。互いに「使いやすさ」という共通点はあるものの、こちらも混同されがちなので説明しておきたいと思う。

アクセシビリティとは?

身体の状態や能力の違いに関わらず、どんな人でも等しく同じように使えることを指す。

身体の状態というのは、高齢者や視聴覚にハンディがある方も含まれているのでただ単に「使いやすさ」を追求するだけではアクセシビリティが向上するとは言えない。ここがミソである。

ユーザビリティは「特定のユーザー」、アクセシビリティは「全ユーザー」に向けている

まさしくテーマの通りなのだが、ユーザビリティの定義を思い出して欲しい。

ユーザビリティは「特定の利用者すなわちユーザー」が特定の目標のために”使いやすく”しているのに対し、アクセシビリティは「全てのユーザー」が”等しく使いやすく”していることを目的としている。ユーザーの適用範囲に大きな違いがあるのだ。

ユーザビリティを向上させるためには?

ユーザビリティを向上させるのに、一番大事なことはユーザビリティテストだ。製品・サービスのプロトタイプをユーザーに試してもらい、評価してもらう。

そのデータを基に改善し、さらにテストを繰り返していく。これに尽きるのだ。

記事の前半部分でも触れたが、ユーザビリティテストは何も大人数からデータを取るのが必ずしも理想ではない。テストに参加するのは5人で充分であり、重要なのは”テストの回数”なのだから。

ユーザビリティテストとあわせて、プロトタイプを専門家の視点で判断・評価する「ヒューリスティック評価」を行うと、より精度の高いデータを低コストで効率よく集めることができるので覚えておこう。

良いとされるユーザビリティとは?

「ユーザビリティの良いものってどんなものなの?」と疑問に思うだろう。記事冒頭でもお話ししたが、実はユーザビリティに優れているものはあなたもよく使う身近なものだったりするのだ。

ユーザビリティが大事と言われているwebサイトを例に上げて、説明しよう。

Googleの検索窓

一目見て分かる操作性とシンプルなデザインが印象的なGoogle。音声検索機能やtabでの操作が可能になのでマウスがなくても使えるなど、ユーザビリティだけでなくアクセシビリティの面においても高水準なものとなっている。

Amazon

世界一のECサイトの呼び声が高いAmazon。直感的な操作性に加え、高い検索精度、スムーズな決済など、ユーザーが買い物しやすいように徹底的に合理化されている。

また、無駄のないシンプルなレイアウトのおかげで商品情報が非常に見やすくなっている。

UQコミュニケーションズ

UQコミュニケーションズは「Webユーザビリティランキング2020企業サイト編」で第2位となっている。特筆すべきは、ユーザーのインサイト(潜在的欲求)を読み解いたかのようなサイトのレイアウトだ。

ユーザーからすると、「それが知りたかった!」というような項目が分かりやすく表示されている、非常に気の利いたデザインとなっている。

悪いとされるユーザビリティとは?

良い例があるということは、悪い例もあるということだ。しかし、例として上げるのは大人の事情で難しいため、ここでは悪いとされるwebサイトの一例をあげようと思う。

見たいモノや情報がどこにあるのかわからない

これが一番致命的で悪い例だと思う。特定の目標を持ったユーザーが”特定の目標を達成すること”ができないのは残念なことだ。

意図した作動や機能をしてくれない

webサイトであればページの読み込みに時間がかかってしまったり、画像が正しく表示されなかったりすると、ユーザーはそのサイトから足早に去ることだろう。

また、ユーザー側にサイトを閲覧するためのブラウザなどを指定する、というようなやり方も悪い例だ。

操作しづらい

操作しづらいのも困ったものだ。タップするアイコンが小さすぎてクリックしずらかったり、スクロールしている途中にグーグルマップがあると、スクロールに反応してマップが拡大されてしまったり…せっかく見やすいサイトのレイアウトだったとしても、これだとユーザーはがっかりしてしまうだろう。

まとめ

ユーザビリティとは「使いやすさ、使い勝手」ではあるものの、特定の目標を達成するための、特定のユーザーに向けたものであることを忘れてはならない。

“ユーザビリティを制すものはUI/UXを制す。”と言っても過言ではなく、ユーザビリティについて真摯に向き合うことで、ユーザーのニーズやインサイト(潜在的欲求)を深く理解することになるだろうし、それが最高のUXを生み出すきっかけになるだろう。

日常生活のありとあらゆるモノやコトにユーザビリティが組み込まれているので、意識して観察するだけでも勉強になるし、勝手に改善策を考えてみても面白いので、ぜひ試してみてほしい。