高知大学
深田 陽久教授
高知大学
深田 陽久教授
高知大学 海洋資源科学科 海洋生物生産学コース 水族栄養学研究室 では、世界でも珍しい生理学的観点から養魚飼料の開発を行っています。魚の「食欲」・「消化・吸収」・「成長」といった生理現象を理解することで、飼料問題の解決に取り組んでいます。人が測る手間を省きながら、安定した養殖魚育成を目指すためアイエンターの「IoT水質センサー」が導入されました。
深田 陽久教授に導入の経緯、導入後の効果や今後実現したいことなどをお伺いしています。
研究室では、ブリやマダイを飼育するには大きな水槽が必要なため、直径6m、容積30トンの水槽が18基あり、適宜、小型の水槽に収容して飼育をしています。
基本的に毎日、飼育施設に行き、餌をあげたり水槽の掃除をしたり、適性な飼育密度になるように管理することが必要です。給餌後に手動で酸素量を計測していますが、夏の高水温時や水槽内が過密になっているときは給餌タイミング以外でも計測が必要です。
魚を飼育・観察することで研究に活かせることは多いですが、人手不足という問題が常にあります。研究室だけの問題ではなく、産業として魚類養殖を維持・発展するためにはIT化が必要なのではと考えておりました。
デジタル化推進補助金制度を利用して水質センサーの導入を検討していたところ、費用が他社よりも安く、他企業からの評判の良いアイエンターのIoT水質センサーを知り導入を決めました。
研究室では、通年飼育が必要なストック魚、特定の期間飼育となる個人研究のための試験魚の世話が必要となります。餌の試験の場合、週6日給餌が基本となっているので、土曜日の給餌はほぼ個人の義務となります。
また、病魚発生の時には、土日昼夜関係なく、投薬や病魚の回収など、迅速に対応しなければなりません。1水槽あたり数分で計測は終わりますが、土日でも30分くらいかけて自宅から研究室まで行く必要があるので、個人の負担が大きかったです。
手動で計測したデータは紙に記録していましたが、10日ごとにExcelに転記し、グラフソフトでグラフ化を手入力で行うのも手間がかかります。手動計測のものだと暗い場所で液晶が見えにくいので使いづらかったですね。
水槽から離れた場所でもセンサーから自動計測された水質データをリアルタイムで確認できるので、心理的不安が軽減されました。夏に餌をあげると溶存酸素が低くなりますが、センサーがあることで常に気にしなくても良くなりましたし魚の斃死リスクを下げられるのは安心です。
水温の動きをグラフで可視化できるので、給餌の判断材料として使用しています。また、グラフ化されたデータを論文作成時にすぐに使用できるようにもなりました。
センサーを導入したことでわかったこともあります。水槽では地下浸透海水を使用していますが、川の水の影響や海の潮の満ち引きの影響を受けていたんです。夜に溶存酸素が急に低い値で入ってくることがあることで判明しました。
魚が餌の時間になると活発になり、溶存酸素が少し低くなることで、魚が餌の時間を把握することもわかりました。2日に1回でも魚は覚えています。水質の管理だけではなく、データを見ることで新しい発見も得ることができ、研究に役立っています。
過去に、他社製品の水温・溶存酸素・水深の計測が可能な24時間センサーを導入しているときもありましたが、毎日バッテリーの充電が必要で、パソコンを現場まで持っていきデータを取得する必要もありました。アイエンターさんのIoT水質センサーはバッテリー充電の必要もなく、データも自動で取得できるのでとても楽です。
約1年間使用していますが、エラーは一度もありません。定期的にメンテナンスが必要ですが、陸上養殖なので、あまり付着物もなく特に不便ではないです。
24時間365日いつでも異常水質に対して、パソコンやスマホにリアルタイムで通知がきますが、メールだけでなく、電話やアプリでの通知があればもっと気が付きやすくなると思います。
遠隔カメラ、給餌機、センサーで様子を見ていますが、データの一元化ができるとありがたいです。
研究室は予算が限られているので現状、難しいのですが、論文にデータを活用できますし安心して飼育研究ができるので、費用面等の問題をクリアできれば、全ての水槽にアイエンターさんのIoT水質センサーを導入したいです。
高知大学で育てたブランド養殖魚の卸業者に育成データを公開して食の安心・安全を届け、高付加価値化に繋げていきたいと考えています。
高知大学の水族栄養研究室では、 養殖魚(ブリ・マダイ等)のより良い飼料の開発を目的として行っています。
魚は種類や大きさによって栄養特性が異なっています。そのため、魚種と大きさに合わせた適切な餌が必要です。そこで、それぞれの魚種の栄養特性と体の仕組み(餌の吸収・消化:栄養素の代謝:成長のしくみ等)を生化学的手法や分子生物学的手法を用いて詳しく解析しています。
生理学は目立たない仕事ですが、実はいろんな事に繋がる重要な研究分野です。ブランド養殖魚の開発もそのうちの一つで、高知県の名産の柚子を餌に加えることで、鮮度の維持と柑橘香の付与に成功した世界初の香る魚「柚子ぶり(現:柚子鰤王)」は当研究室の開発です。現在では、日本各地でフルーツを用いた餌が使われる様になりました。
魚類養殖には多々解決すべき点があります。養殖業を安定した産業にし、日本に水産学という学問と養殖業という産業を存続させたいと思っています。高知大学の水族栄養研究室でしかできない研究をすることによって、少しでも貢献したいと考えております。